技能実習生の生活支援|住居・通勤・通院・宗教への対応
技能実習生を受け入れると、仕事以外の対応が発生します。 住むところ、通勤の手段、病院、銀行、役所の手続き。制度上の義務として決まっているものもあれば、決まっていないが誰かがやらないと回らないものもあります。
技能実習生を受け入れると、仕事以外の対応が発生します。
住むところ、通勤の手段、病院、銀行、役所の手続き。制度上の義務として決まっているものもあれば、決まっていないが誰かがやらないと回らないものもあります。
そして、その「誰か」はたいてい総務です。
この記事では、受入れ後に実際に何が発生したかを書きます。当社は建築・内装業で、タイとインドネシアから受け入れています。
書き手は、従業員約50人の会社で総務部長を兼任し、受入れ実務を担当しています。
生活支援は、誰の仕事なのか
先に整理します。

技能実習では、生活指導員を選任することが求められます。 書類上、生活面の支援を担当する人を決める必要があります。
そして監理団体も、定期的な訪問と相談対応を行います。制度としては、会社と監理団体の両方が関わる形になっています。
問題は、日常の細かい対応が誰に来るかです。
体調が悪い、書類が読めない、買い物の場所が分からない、給与明細の見方が分からない。こうした相談は、監理団体の訪問日まで待ってはくれません。 目の前にいる会社の誰かに来ます。
実務としては、総務が引き受けることになります。 当社もそうなりました。
住居の手配
最初に発生するのが住まいです。

入国前に決めておく必要があります。 技能実習計画の書類にも宿舎の情報を記載するため、受入れが決まった段階で動き始めます。
確認すべき点を挙げます。
通勤できるか。 現場に通える場所かどうか。公共交通機関があるか、自転車で行ける距離か。ここが後述する通勤の問題に直結します。
人数に対して広さが足りるか。 一人あたりの居住面積には基準があります。複数人で住む場合、その基準を満たす必要があります。
生活に必要なものが揃うか。 冷蔵庫、洗濯機、寝具、調理器具。入国してすぐ生活が始まるので、事前に準備しておく必要があります。
近くに買い物ができる場所があるか。 これは基準ではありませんが、実際の生活を左右します。
当社は戸建てを買って社宅にした
当社の場合、中古の戸建てを購入し、改装して社宅にしました。
これは建設・内装業だからできた面が大きいと思います。改装が自社でできるので、賃貸物件を探して条件に合わせるより、自由度が高く済みました。
賃貸の場合、外国人の入居に難色を示されることがあります。保証人の問題もあります。自社所有であれば、その交渉が発生しません。
一方で、初期に大きな支出が発生します。継続して受け入れる前提でなければ、割に合いません。当社は継続受入れを前提としていたため、この判断になりました。
同じことができる会社は限られると思います。ただ、賃貸だけが選択肢ではないという意味で書いておきます。
家財は会社負担
冷蔵庫、洗濯機、寝具、調理器具。これらは会社で用意し、費用も負担しました。
入国してすぐ生活が始まるため、事前に揃えておく必要があります。受入れ費用を見積もる際、ここを計上しておいてください。
通勤と移動
見落とされやすいのがここです。
多くの実習生は、日本で運転免許を持っていません。 つまり、通勤手段が限られます。
自転車、徒歩、公共交通機関。現場が変わる業種では、ここが毎回問題になります。
当社は建築・内装業なので、現場は案件ごとに変わります。 そのたびに「どうやって行くか」を伝える必要があります。
移動の案内は、想像以上に手間がかかる
日本人であれば、住所を伝えれば自分で調べて来ます。しかし、日本語で乗換案内を読むのは簡単ではありません。
当社では、バスや電車の乗り方を、その都度案内する必要がありました。何時にどこで乗り、どこで降り、そこから何分歩くのか。
日本語だけで伝えても伝わりません。 母国語での説明を添える、地図を見せる、といった対応が要ります。
これは制度に書かれていない業務ですが、やらないと現場に着けません。
病院
体調を崩したときの対応は、必ず発生します。
問題は、本人が症状を日本語で説明できないことです。そして病院側も、外国語での対応に慣れているとは限りません。
付き添いは必須です。 当社では毎回こちらから同行しています。誰が付き添うのかを事前に決めておいてください。
外国語対応の病院を探す必要は、必ずしもありませんでした。通常の病院に、翻訳アプリを使いながら行っています。症状の説明、医師の指示、薬の飲み方。アプリでおおむね足りています。
ただし本人だけで行かせるのは避けたほうがいいと考えています。アプリがあっても微妙なやり取りは残りますし、何より本人が不安です。
保険証の説明も要ります。 健康保険の仕組み、自己負担の割合、どこの病院に行けばいいのか。入国後の早い段階で説明しておくと、いざというときに動けます。
銀行口座と給与
給与の支払いには口座が必要です。入国後、早い段階で開設の手続きが発生します。
外国人の口座開設は、必要書類が多くなります。在留カード、住民票、印鑑。同行が必要になることもあります。
そして給与明細の説明。控除の項目、税金、社会保険。日本人でも分かりにくいものを、日本語が不慣れな人に説明することになります。
ここを曖昧にすると、「思っていた金額と違う」という不信につながります。最初にきちんと説明しておくべき部分です。
宗教と食事
出身国によって、対応が必要になります。
インドネシアからの受入れでは、イスラム教徒の場合、次の点が関わります。
食事。 豚肉とアルコールを摂らない。会社の行事で食事を出す場合、配慮が必要になります。
礼拝。 1日に複数回の礼拝があります。時間と場所をどうするか。
断食月(ラマダン)。 日中の飲食を控える期間があります。体力を使う現場作業と重なると、安全面の配慮が必要になります。
これらは、知らないと配慮できません。 受け入れる国が決まった段階で、宗教と生活習慣を確認しておいてください。
実際には、本人が業務を優先することが多い
ここは想定と違った部分です。
事前に調べると「礼拝の時間と場所を確保すべき」「断食月には配慮が必要」といった記述が出てきます。構えて準備しましたが、実際には本人たちが業務を優先してくれることが多くありました。
礼拝についても、業務の区切りに合わせて調整してくれる。断食月についても、自分から「大丈夫です」と言ってくる。
信仰の程度は、同じ国の出身でも人によって違います。 そして本人たちは、日本で働くことを選んで来ています。一律に「配慮しなければならない」と決めつけるより、本人がどうしたいかを聞くほうが実態に合っています。
ただし、食事は明確に線がある
一方で、譲れない部分は確実にあります。
豚肉とアルコールは口にしません。 ここは信仰の程度に関わらず、はっきりしています。
会社の行事で食事を出す場合、これは必ず確認してください。全員で同じものを食べる場面で、食べられないものが出ると、本人が困ります。 そして本人からは言い出しにくい。
面接の段階で確認しておき、社内にも共有しておくのが確実です。
社内への周知
生活支援と並んで必要なのが、受け入れる側の準備です。
実習生が来ることを、社内にどう伝えるか。何も説明せずに配属すると、現場が戸惑います。
- どういう制度で来ているのか
- 日本語がどの程度通じるのか
- 宗教上の配慮が必要か
- 誰が窓口なのか
特に最後の項目です。 何かあったとき誰に言えばいいのかが分からないと、問題が放置されます。
技能検定の対策で業務時間を使う際にも、事前の周知が必要でした(別記事で扱っています)。説明のコストは、説明しなかった場合の摩擦より、はるかに小さい。
2人目以降は軽くなる
技能検定の対策と同じく、生活支援も1人目が最も重くなります。

2年目以降は、先輩の実習生が教えられるようになります。 買い物の場所、ゴミの出し方、病院、役所の手続き。同じ言語で説明できる人が社内にいるというのは、非常に大きい。
会社が日本語で説明するより、はるかに速く正確に伝わります。
継続して受け入れる前提であれば、1人目の負担は初期投資として見るべきです。 逆に1人限りで終わらせるなら、この負担は回収されません。
これから受け入れる会社へ
1. 日常の相談は総務に来る。 制度上は生活指導員と監理団体が関わりますが、細かい対応は目の前の会社に来ます。誰が引き受けるかを決めておいてください。
- 通勤・移動の案内は継続的に発生する。 特に現場が変わる業種では、そのたびに説明が必要です。
- 病院と口座は、同行が前提。 入国後の早い段階で発生します。
- 宗教は構えすぎない。ただし食事は確認する。 礼拝などは本人が業務を優先してくれることが多い一方、豚肉とアルコールは明確な線です。面接時に確認し、社内で共有してください。
- 社内への周知を先に済ませる。 窓口が誰かを明示しておくこと。
- 1人目の負担は初期投資。 2年目以降は先輩が教えられるようになります。
よくある質問
住居は会社が用意する必要がありますか
受入企業には住居を提供する義務があります。賃貸を借りるか自社で用意するかは会社によります。当社は中古の戸建てを購入して改装しましたが、初期に大きな支出が発生するため、継続受入れが前提でなければ割に合いません。
家賃は誰が負担しますか
当社では本人から徴収しています。制度上も認められており、実費の範囲であれば問題ありません。一方、冷蔵庫や洗濯機などの家財は会社で負担しました。
病院にはどう連れて行きますか
当社では毎回こちらから同行しています。外国語対応の病院を探す必要は必ずしもなく、通常の病院に翻訳アプリを使いながら行っています。本人だけで行かせるのは避けたほうがいいと考えています。
宗教への配慮はどこまで必要ですか
礼拝や断食については、本人が業務を優先してくれることが多いというのが当社の実感です。ただし食事は明確な線があります。豚肉とアルコールは口にしないため、会社の行事で食事を出す際は必ず確認してください。
生活支援は誰の仕事ですか
制度上は生活指導員と監理団体が関わりますが、日常の細かい相談は目の前の会社に来ます。実務としては総務が引き受けることになりがちです。誰が担当するかを事前に決めておいてください。
通勤はどうしていますか
多くの実習生は日本の運転免許を持っていません。現場が変わる業種では、そのたびに移動手段の案内が必要です。日本語だけでは伝わらないため、母国語での説明や地図を用意しています。
この話の、実例を持ち寄る場があります。
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