技能実習・特定技能・育成就労の違い|受け入れ企業のための制度比較
外国人材の受入れを検討すると、3つの制度が出てきます。技能実習、特定技能、そして2027年4月から始まる育成就労。 制度の解説は多くありますが、企業が知りたいのは別のことだと思います。 何年働いてもらえるのか。
目次全11章
外国人材の受入れを検討すると、3つの制度が出てきます。技能実習、特定技能、そして2027年4月から始まる育成就労。
制度の解説は多くありますが、企業が知りたいのは別のことだと思います。
何年働いてもらえるのか。途中で辞められるのか。いくらかかるのか。誰が何を教えるのか。
この記事では、受け入れる側の負担と計画という観点で3制度を比較します。当社は建築・内装業で技能実習生を受け入れ、特定技能への移行を予定しています。
書き手は、従業員約50人の会社で総務部長を兼任し、受入れ実務を担当しています。
制度は移行期にあり、詳細が固まっていない部分もあります。実際の判断は必ず最新の公式情報でご確認ください。
まず、3つの関係を整理する
混乱しやすいので、先に位置づけを示します。
技能実習は、なくなります。 2027年4月に育成就労制度が施行され、技能実習は発展的に解消されます。移行期間を経て、2030年頃には使われなくなる見込みです。
育成就労は、技能実習の後継です。 ただし目的が変わります。技能実習は「国際貢献としての技能移転」でしたが、育成就労は「人材の育成と確保」です。建前がなくなった、と言い換えてもいいと思います。
特定技能は、その先にあります。 育成就労で3年育成し、試験に合格すれば特定技能1号へ。さらに上には2号があります。
つまり、こういう流れです。
育成就労(3年・育成)→ 特定技能1号(5年・即戦力)→ 特定技能2号(更新制)
技能実習を受け入れている会社は、この流れの最初の部分が入れ替わると考えてください。
企業目線での比較
| 技能実習(〜2027) | 育成就労(2027〜) | 特定技能1号 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 技能移転(国際貢献) | 人材育成と確保 | 即戦力の確保 |
| 期間 | 最長5年 | 原則3年 | 通算5年 |
| 転籍・転職 | 原則不可 | 一定要件で可 | 同一分野内で可 |
| 入国時の日本語 | 原則なし | N5相当 | N4相当 |
| 受入れ人数枠 | あり | あり | 企業単位の上限なし |
| 支援機関 | 監理団体 | 監理支援機関 | 登録支援機関(任意) |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 不可(2号は可) |
太字にした3点が、企業にとって最も影響の大きい変更です。

結局、最大何年働いてもらえるのか
制度をまたいで働ける期間を整理します。ここが最も聞かれる部分です。

現行制度(技能実習からの移行)
| 段階 | 期間 | 累計 |
|---|---|---|
| 技能実習1号 | 1年 | 1年 |
| 技能実習2号 | 2年 | 3年 |
| 技能実習3号 | 2年 | 5年 |
| 特定技能1号 | 通算5年 | 10年 |
| 特定技能2号 | 更新制・上限なし | ― |
技能実習だけなら最長5年。 ただし3号へ進むには、監理団体と受入企業が優良認定を受けている必要があり、2号から3号への移行時に一時帰国も求められます。すべての企業が使えるわけではありません。
2号まで(3年)で特定技能1号に移行するのが、現実的な進み方です。 この場合、3年+5年で通算8年になります。
育成就労制度(2027年4月以降)
| 段階 | 期間 | 累計 |
|---|---|---|
| 育成就労 | 原則3年 | 3年 |
| 特定技能1号 | 通算5年 | 8年 |
| 特定技能2号 | 更新制・上限なし | ― |
育成就労は原則3年で、技能実習3号のような延長はありません。 そこから特定技能1号へ移行して5年。合計8年が基本形になります。
特定技能2号まで進めば、上限がなくなる
特定技能2号は更新制で、在留期間の上限がありません。 家族の帯同も可能になります。
ただし要件は上がります。熟練した技能と、日本語N3相当(B1)以上が求められます。
「3年で帰る人」ではなく「10年以上働く可能性のある人」として考えられるかどうか。 ここが、受入れを検討する際の判断を大きく変えます。
実務上の結論
8年を基本線として計画してください。
技能実習(または育成就労)の3年で投資を回収しようとすると、コストが合いません。その先の5年を含めて考えたとき、初めて計算が成り立ちます。
そして本人にとっても、3年で終わる話なのか、その先があるのかで、働く姿勢が変わります。 見通しを早い段階で示すことは、定着にも効きます。
変更1|転籍が認められる
これが最大の変化です。

技能実習では、原則として転籍できませんでした。 受け入れた実習生は、基本的に契約期間を通じて自社にいる前提でした。
育成就労では、一定の要件を満たせば本人の意向で転籍できます。 要件として、同一機関での就労が1年を超えていること、技能検定基礎級等と日本語A1相当(N5等)の試験に合格していることなどが挙げられています。
企業にとって何が変わるか
3年いる前提で計画を立てられなくなります。
技能実習では3〜5年の在籍を見込めましたが、育成就労では1年から2年で転籍される可能性があります。 育成にかけた時間と費用が、回収前に失われることがある。
これは制度としては妥当な変更だと思います。転籍できないことが、劣悪な労働環境の温床になっていたのは事実です。
ただし受入企業としては、「育てても出ていく」前提で人員計画を立てる必要があります。
対応として考えられること
転籍を防ぐ手段は、実質的に1つしかありません。選ばれ続けることです。
賃金、住環境、教育、人間関係。他社に移る理由がなければ、転籍は起きません。 逆に言えば、これまで転籍できないことに依存していた会社は、成り立たなくなります。
これは負担が増える話ですが、筋は通っていると考えています。
変更2|費用が上がる
送出機関に支払う手数料について、外国人本人の負担は月給の2ヶ月分までと上限が設けられます。
そして上限を超えた分は、企業または監理支援機関が負担するとされています。
つまり、企業側の持ち出しが増える
これまで本人が背負っていた費用の一部が、企業側に移ります。
受入れ1人あたりの初期費用が上がると考えておくべきです。金額は国や送出機関によって変わるため一律には言えませんが、予算を組む段階で技能実習と同じ想定をしていると、足りなくなる可能性があります。
この変更も、制度としては妥当です。過大な手数料を借金で払って来日し、返済のために失踪するという構造が問題視されてきました。その是正です。
負担が企業に移ることを、前提として受け入れる必要があります。
変更3|日本語要件が課される
技能実習では、入国時の日本語要件は原則ありませんでした(介護分野を除く)。
育成就労では、入国前にN5相当(A1)が求められる方向です。 そして特定技能1号への移行時にはN4相当(A2)。
企業にとっての意味
入国時点で、ある程度の日本語ができる人が来ます。 これは受入れ後の負担が下がるという意味で、良い変更です。
一方で、3年間でN4まで引き上げる責任が発生します。 移行に必要な水準に届かなければ、特定技能に進めません。
日本語学習を、誰がどこまで見るのか。 会社でやるのか、監理支援機関に任せるのか。この分担を最初に決めておく必要があります。
当社の場合、技能検定の学科と日本語は監理団体にフォローしてもらい、実技は自社で見るという分担にしています。同じ考え方が使えると思いますが、監理支援機関がどこまで見てくれるかは契約次第です。
移行期はどうなるのか
2027年4月に一斉に切り替わるわけではありません。
すでに入国している技能実習生は、在留期間が満了するまで現行のルールで継続します。 経過措置により、施行後も一定期間は技能実習と育成就労が併存します。
移行期間はおおむね3年程度とされており、2030年頃には技能実習が使われなくなる見込みです。
受入企業が考えるべきこと
新規の受入れは、2027年4月以降は育成就労になります。
いま技能実習生を受け入れている会社は、次の2つを同時に抱えることになります。
- 在籍中の技能実習生 — 現行ルールで満了まで
- 新規の受入れ — 育成就労のルールで
書類も要件も違うものが並走します。 監理団体(監理支援機関)がこの移行にどう対応する方針か、確認しておいたほうがいいと思います。
当社は特定技能への移行を選んだ
制度の話が続いたので、当社の判断も書いておきます。
在籍している技能実習生は、特定技能へ移行させる予定です。
理由は単純で、育てた人材に続けて働いてもらいたいからです。技能検定に合格し、日本語の要件を満たせば移行できます。当社は全員が技能検定に合格しています。
移行のほうが、新規より確実
新しく受け入れれば、また面接から入国まで4ヶ月、入国後の研修に1ヶ月かかります。戦力になるまで半年以上です。
一方、移行であれば、すでに現場を知っている人がそのまま続けられます。 手続きは必要ですが、育成のコストはかかりません。
技能実習は3年で終わるものではなく、その先の5年を含めた8年の枠組みとして考えるべきだったというのが、いまの実感です。
育成就労になっても、考え方は同じ
制度が変わっても、この方針は変わらないと考えています。
3年で育て、その先も働いてもらう。 転籍が可能になる以上、そのためには選ばれ続ける必要がある。やるべきことは、むしろ明確になりました。
これから検討する会社へ
1. 3年で終わる話として考えない。 育成就労の3年と特定技能の5年をつなげて計画してください。3年だけを見ると、投資が回収できません。
- 転籍される前提で条件を整える。 育成就労では転籍が可能になります。囲い込みではなく、選ばれ続ける努力が要ります。
- 費用は技能実習より上がる。 送出機関への手数料の一部が企業負担に移ります。予算を上振れで見てください。
- 日本語の分担を最初に決める。 N5からN4へ引き上げる責任が発生します。誰がどこまで見るのかを、監理支援機関との契約時に確認してください。
- 移行期は2つの制度が並走する。 在籍者は技能実習、新規は育成就労。書類も要件も違います。
よくある質問
技能実習生は最大何年働けますか
技能実習だけなら最長5年(1号1年+2号2年+3号2年)です。ただし3号へ進むには監理団体と受入企業の優良認定が必要で、一時帰国も求められます。2号まで(3年)で特定技能1号へ移行し、通算8年というのが現実的な進み方です。
育成就労になると期間はどう変わりますか
育成就労は原則3年で、技能実習3号のような延長はありません。そこから特定技能1号へ移行して5年、合計8年が基本形になります。特定技能2号まで進めば更新制で上限がなくなります。
技能実習と育成就労の一番大きな違いは何ですか
転籍が認められる点です。技能実習では原則不可でしたが、育成就労では一定要件を満たせば本人の意向で転籍できます。3年いる前提での人員計画が立てられなくなります。
育成就労になると費用は上がりますか
上がる見込みです。外国人が送出機関に支払う手数料は月給の2ヶ月分までとされ、それを超える分は企業または監理支援機関が負担することになります。
2027年4月に一斉に切り替わるのですか
いいえ。すでに入国している技能実習生は在留期間が満了するまで現行ルールで継続します。経過措置により、施行後3年程度は技能実習と育成就労が併存します。
特定技能は誰でも移行できますか
技能検定と日本語の要件を満たす必要があります。技能実習2号を良好に修了していれば試験が免除される場合もありますが、職種と業務の関連性が問われます。要件は変更されるため、最新の公式情報をご確認ください。
関連する記事
当社の受入れ実務を、テーマごとに分けて記録しています。
これから検討する方へ
- 受け入れると、いくらかかるのか — 監理費、初期費用、金額に出ないコスト。それでも受け入れている理由
- 面接と、入国までの5ヶ月 — 戦力になるまでのスケジュールと、10人から3人を選ぶ進め方
受入れが決まってから
- 監理団体を3社比較して選んだ話 — 比較した7つの軸と、断った2社に足りなかったもの
- 技能検定で会社が何をやったか — 実技対策を業務時間内に。1年目は立ち合いが入る
受入れ後の運用
- 生活支援で実際に発生すること — 住居、通勤、病院、宗教
- 失踪とトラブルを防ぐためにやっていること — 社宅ルール、相談窓口、面接時の確認
この話の、実例を持ち寄る場があります。
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