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外国人雇用 2026.08.18公開 · 8分で読める

技能実習生の失踪を防ぐには|原因と受け入れ企業の対策

技能実習生の失踪は、制度の問題として繰り返し報じられています。 ただし報道や解説記事の多くは、制度批判か統計の紹介で終わります。借金を背負って来日する構造、劣悪な労働環境、転籍できない仕組み。

技能実習生の失踪を防ぐには|原因と受け入れ企業の対策

目次全8章
  1. 「帰国したい」と言われたことがある
  2. 相談窓口を作る
  3. 同じ国で固めた
  4. 社宅の管理が、想像以上に重要
  5. 面接時に確認すべきこと
  6. 失踪を防ぐという発想の限界
  7. これから受け入れる会社へ
  8. よくある質問

技能実習生の失踪は、制度の問題として繰り返し報じられています。

ただし報道や解説記事の多くは、制度批判か統計の紹介で終わります。借金を背負って来日する構造、劣悪な労働環境、転籍できない仕組み。それらは事実ですが、受入企業として何をすればいいのかは書かれていません。

当社では、失踪は起きていません。実習生同士のトラブルもありません。

ただし「途中で帰国したい」と言われたことはあります。

この記事では、実際に何をしているかを書きます。制度の話ではなく、日常の運用の話です。

書き手は、従業員約50人の建築・内装会社で総務部長を兼任し、受入れ実務を担当しています。

「帰国したい」と言われたことがある

3年目に入った頃でした。

3年目は、気持ちが揺れる時期の図解

失踪ではありません。正規の手続きで帰国したい、という申し出です。 理由は本人の事情によるもので、労働環境への不満ではありませんでした。

それでも、この時点で何かが起きていたということです。

3年目という時期

技能実習は原則3年です。3年目は、終わりが見えてくる時期でもあります。

来日した当初の緊張感が薄れ、日本での生活にも慣れる。同時に、母国に残してきた家族のこと、帰国後の生活のことが現実味を帯びてきます。

この時期に、気持ちが揺れることがある。 当社の経験としては、そういう認識でいます。

早く気づけるかどうか

重要なのは、申し出があった時点で気づけたことでした。

黙って姿を消されれば失踪ですが、相談があれば話し合えます。相談できる状態を作っておくかどうかが、失踪との分かれ目だと考えています。

相談窓口を作る

当社では、総務に気軽に相談できる窓口を作っています。

チャットで直接連絡が取れる形にしました。改まった面談ではなく、日常的に聞ける状態にしておくことが重要です。

なぜ改まった面談では足りないか

監理団体の定期訪問でも面談は行われます。しかし、月に一度の面談で本音が出るとは限りません。

「何か困っていることはありますか」と正面から聞かれて、「あります」と答えられる人は多くない。特に、立場が弱いと感じている場合はなおさらです。

一方で、日常的にやり取りしている相手には、小さなことを言いやすくなります。「体調が悪い」「書類の意味がわからない」「バスの時間が変わった」。 こうした些細なやり取りの積み重ねが、大きな相談への入口になります。

母国語で聞ける状態にしておく

日本語で言いにくいことも、母国語なら言えます。

翻訳を介してでも、母国語で受け付ける窓口があるかどうかは大きい。当社では翻訳を使いながらやり取りしています。

2年目以降は、先輩の実習生が通訳として機能する面もあります。ただし、先輩には言いにくい内容もあります。会社への直通の経路は、別に確保しておくべきです。

同じ国で固めた

当社は、受け入れる国をある程度まとめています。

母国語で完結すると、日本語が伸びないの図解

結果として、実習生同士のトラブルは起きていません。

理由

同じ言語を話し、同じ生活習慣を持つ人同士であれば、日常の摩擦が起きにくいからです。

食事、生活時間、宗教、価値観。異なる国の人を同じ社宅に住まわせると、こうした部分で衝突が起きる可能性があります。

同じ国で固めるのは、トラブル予防としては合理的です。

ただし副作用もある

一方で、日本語を学ばなくなるという問題が出ます。

母国語で完結する環境ができてしまうと、日本語を使う必要がなくなる。特に2年目以降、先輩がいる状態では顕著です。

特定技能への移行には日本語の要件があります。 そして2027年から始まる育成就労では、日本語要件がさらに明確になります。

同じ国で固めることの利点と、日本語習得が止まる欠点は、同じ構造から出ています。 意識的に切り分ける必要があります。

社宅の管理が、想像以上に重要

これは事前に想定していませんでした。

若い人たちが集まって住むと、生活が乱れることがあります。

社宅に集まって宴会をする。片付けない。汚れが蓄積する。日本人の若手が寮に住んでいても起きることですが、放置すると衛生面の問題になります。

清掃をさせることは、管理の一部

当社では、清掃を明確にルール化しています。

「気をつけてください」では機能しません。誰が、いつ、どこを清掃するのかを決める必要があります。

これは細かい話に見えますが、生活環境の乱れは、生活態度の乱れにつながります。 そして最終的には、仕事にも出ます。

社宅使用ルールは、現地語で作る

ここが最も重要な実務です。

日本語でルールを貼っても、読めなければ意味がありません。現地語で作成し、明示してください。

  • ゴミの分別と出す日
  • 清掃の分担と頻度
  • 騒音(近隣への配慮)
  • 火気の扱い
  • 来客の可否
  • 退去時の原状回復

「言ったはず」は通用しません。 書面で、読める言語で、最初に渡す。それだけで防げる問題が相当あります。

面接時に確認すべきこと

トラブルの予防は、面接の段階から始まっています。

喫煙

喫煙するかどうかは、必ず確認してください。

問題は本人の健康ではなく、社風と合うかどうかです。

現場に喫煙者が多い会社もあれば、全面禁煙の会社もあります。社宅での喫煙をどうするかという問題もあります。受け入れてから「実は吸う」と分かると、対応が後手になります。

面接時に確認し、自社のルールを先に伝えておく。 これで防げます。

飲酒

こちらはより重要です。

飲酒自体を禁じることはできませんが、酒気帯びでの就業は絶対にさせてはいけません。 建設・内装の現場では、命に関わります。

そして社宅で集まって飲む場合、翌朝に残ることがあります。

管理として必要なのは次の点です。

  • 就業前日の飲酒についてルールを明示する
  • 社宅での飲酒の可否と時間帯を決める
  • 現場に入る前の状態確認を、誰がどう行うか決めておく

これは日本人の従業員にも同じことが言えますが、生活の場を会社が用意している以上、管理の責任範囲が広くなります。

生活面の素養

清掃や整理整頓といった生活習慣は、本人の素養によるところが大きいというのが実感です。

面接の短い時間で完全に見抜くことはできませんが、質問の仕方によってある程度は分かります。 現在どういう生活をしているか、共同生活の経験があるか。

監理団体が面接前にテストを実施している場合、その結果も参考になります。

失踪を防ぐという発想の限界

最後に、考え方について書きます。

囲い込むのではなく、出ていく理由をなくすの図解

「失踪を防ぐ」という発想だけでは、限界があります。

囲い込む、監視する、逃げられないようにする。この方向で対策しても、根本的な解決にはなりません。 そして2027年からの育成就労では転籍が可能になるため、囲い込みという発想自体が成り立たなくなります。制度の変更点は別記事で整理しています。

必要なのは、出ていく理由をなくすことです。

  • 相談できる相手がいる
  • 生活環境が整っている
  • ルールが読める言語で示されている
  • 給与や労働条件が説明されている
  • 3年後の見通しが立っている

当社で失踪が起きていないのは、これらを続けているからだと考えています。 特別なことはしていません。

そして「帰国したい」と言われたときに、それを聞ける関係があったこと。 これが最も重要だったと思っています。

これから受け入れる会社へ

1. 社宅使用ルールを現地語で作る。 日本語で貼っても読めません。書面で、最初に渡してください。

  1. 清掃をルール化する。 「気をつけて」では機能しません。誰がいつどこを、まで決めてください。
  1. 喫煙と飲酒は面接時に確認する。 特に飲酒は、酒気帯び就業の防止として管理が必要です。
  1. 相談窓口を日常的な形で作る。 月一の面談では本音は出ません。チャットなど、気軽に聞ける経路を用意してください。
  1. 同じ国で固めると摩擦は減る。 ただし日本語習得が止まる副作用があります。
  1. 3年目は気持ちが揺れる時期。 終わりが見えてくると、迷いが出ます。相談できる状態を保ってください。

よくある質問

失踪を防ぐには何をすればいいですか

囲い込むのではなく、出ていく理由をなくすことです。相談できる相手がいる、生活環境が整っている、ルールが読める言語で示されている、3年後の見通しが立っている。当社ではこれらを続けています。

相談窓口はどう作ればいいですか

月に一度の面談では本音は出ません。チャットなど、日常的に気軽に聞ける経路を用意してください。些細なやり取りの積み重ねが、大きな相談への入口になります。

社宅のルールはどう決めればいいですか

現地語で書面を作り、最初に渡してください。日本語で貼っても読めません。ゴミの分別、清掃の分担、騒音、火気、来客の可否、退去時の原状回復。「言ったはず」は通用しません。

実習生同士のトラブルは起きますか

当社では起きていません。受け入れる国をまとめているため、言語と生活習慣が共通していることが理由と考えています。ただし母国語で完結する環境ができるため、日本語の習得が止まるという副作用があります。

飲酒はどう管理すればいいですか

飲酒自体を禁じることはできませんが、酒気帯びでの就業は絶対にさせてはいけません。就業前日の飲酒についてルールを明示し、現場に入る前の状態確認を誰がどう行うか決めておいてください。

「帰国したい」と言われたらどうしますか

まず話を聞いてください。黙って姿を消されれば失踪ですが、相談があれば話し合えます。相談できる状態を作っておくかどうかが、失踪との分かれ目だと考えています。

この話の、実例を持ち寄る場があります。

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