技能実習生の受け入れ費用|初期費用と月額の内訳
「外国人材=安い労働力」という認識があるとすれば、それは事実と違います。 技能実習生にも特定技能外国人にも、日本人と同等以上の報酬を支払う義務があります。
目次全10章
「外国人材=安い労働力」という認識があるとすれば、それは事実と違います。
技能実習生にも特定技能外国人にも、日本人と同等以上の報酬を支払う義務があります。そのうえで、監理費、住居、生活支援、報告義務の負荷が上乗せされます。
コストだけで比較すれば、日本人を雇うほうが安い。 これが受け入れている側の実感です。
それでも当社は受け入れを続けています。この記事では、実際にいくらかかるのかと、それでも続けている理由を書きます。
書き手は、従業員約50人の建築・内装会社で総務部長を兼任し、受入れ実務を担当しています。
給与は日本人と同等以上
まず前提です。ここを誤解している人が、いまだにいます。
技能実習生にも特定技能外国人にも、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬を支払う必要があります。最低賃金を下回ることはもちろん、日本人より低く設定することもできません。
つまり、人件費そのものは下がりません。
その前提で、追加でかかる費用を見ていきます。
毎月かかる費用
監理費
監理団体に毎月支払います。相場は1名あたり月3万円〜5万円とされています。

これに加えて、現地の送出機関への機関費が月5千円〜1万円程度。合わせて月3.5万〜6.5万円が、雇用期間中ずっと発生します。
金額は監理団体、国、人数、地域によって変わります。当社の場合は相場より低い水準ですが、これは複数社を比較して選んだ結果でもあります。
特定技能に移行すると下がる
参考までに、特定技能では登録支援機関への委託費が月2万〜4万円とされ、送出機関への継続費用は発生しません。
つまり技能実習と比べて、月1.5万〜3万円、年間で18万〜36万円ほど安くなります。
この差は、移行を検討する理由のひとつになります。
初期にかかる費用
受入れ時には、まとまった支出が発生します。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留資格申請・取次 | 書類の作成と申請 |
| 渡航費 | 入国時の航空券 |
| 入国前講習費 | 現地での日本語講習 |
| 健康診断 | 入国前後 |
| 保険 | 技能実習生総合保険など |
| 組合出資金・年会費 | 監理団体への加入 |
1人あたり50万〜90万円程度という試算が一般的です。人数、国、監理団体によって幅があります。
住居と家財
ここは見落とされやすい部分です。
受入企業には、住居を提供する義務があります。 賃貸を借りるか、自社で用意するか。
当社は中古の戸建てを購入し、改装して社宅にしました。 建設・内装業なので改装を自社でできたこと、継続受入れを前提としていたことが理由です。初期に大きな支出が発生するため、一度きりの受入れなら割に合いません。
家賃は本人から徴収しています。 これは制度上も認められており、実費の範囲であれば問題ありません。
一方、冷蔵庫、洗濯機、寝具、調理器具といった家財は会社で負担しました。 入国してすぐ生活が始まるため、事前に揃える必要があります。
金額に出ないコスト
ここが、この記事で最も伝えたい部分です。費用の記事は多くありますが、この部分を書いたものが見当たりません。

総務の工数
当社では、毎月0.2人月程度を見込んでいます。
人数によって変わりますが、常時これくらいは取られます。内訳は次のようなものです。
- 監理団体への定期報告
- 監査の対応
- 実習日誌などの書類作成
- 生活面の相談対応
- 病院への付き添い
- 通勤・移動の案内
報告義務があるため、書類作業は継続的に発生します。 そして生活面の相談は、予定して発生するものではありません。
技能検定の対策
年に一度、技能検定があります。実技対策を業務時間内に行うため、その分の人件費が発生します。
当社の場合、試験前に2〜3回。教える側の職人の時間も含めれば、決して小さくありません。 練習用の材料費も会社負担です。
1年目は立ち合いが入るため、準備を省略できません。詳細は技能検定の記事で扱っています。
つまり、現場の負荷が高い
これらを合計すると、日本人を1人雇う場合と比べて、周囲の負荷が明確に高いという結論になります。
コストで見ると、合わない
正直に書きます。費用だけを並べて比較すれば、日本人を採用するほうが安く済みます。
- 給与は同等以上
- 監理費が毎月上乗せ
- 初期費用が50万〜90万円
- 住居の用意が必要
- 総務の工数が毎月0.2人月
- 技能検定の対策に時間と材料費
「安い労働力を確保できる」という理由で検討しているなら、その前提は成り立ちません。
それでも受け入れている理由
では、なぜ続けているのか。
職人の中途市場が厳しい
当社は日本人の採用ができていないわけではありません。採用自体はできています。
ただし、職人の不足は深刻です。 中途市場の価格は上がり続けており、経験者を採ろうとすれば、それ相応の条件が必要になります。
「コストで比較すると合わない」という話は、比較対象が同じ条件で採れる前提での話です。 実際には、その前提が崩れつつあります。
新卒は定着が読めない
新卒採用も行っていますが、定着を含めて不透明な部分があります。
採用して育て、数年で辞める。このとき失われるのは、給与だけではありません。 教育にかけた時間、その間の現場の負荷、そして採用をやり直すコスト。
技能実習は3年、特定技能まで含めれば通算8年の枠組みです。 期間が読めるということ自体に価値があります。
ここが、コスト計算では見えにくい部分です。
教えることで、社内が変わる
もうひとつ、想定していなかった効果があります。
言葉が通じない相手に技術を教えるには、手順を言語化する必要があります。 感覚で伝えていたものを、順序立てて説明することになる。
この過程で、社内の技術が整理されます。 そしてそれは、若手の日本人を教えるときにも効きます。
2年目以降は、先輩が後輩を教える
受入れを継続すると、先輩の技能実習生が後輩を教える構造ができます。
同じ言語で説明できる人が社内にいるというのは、非常に大きい。会社が日本語で説明するより、はるかに速く正確に伝わります。
総務の負担は、1人目に集中します。2年目以降は明確に下がります。
ただし、緩みも出る
いいことばかりではありません。
2年目以降、先輩に影響されて日本語を学ばなくなるということが起きます。
先輩が通訳してくれるので、自分で覚える必要がなくなる。生活も仕事も、先輩に聞けば済んでしまう。結果として、日本語の習得が止まります。
これは特定技能への移行を考えると問題です。移行には日本語の要件があります。 そして2027年から始まる育成就労では、日本語要件がさらに明確になります。
先輩がいることの利点と、日本語を学ばなくなる欠点は、同じ構造から出ています。 意識的に切り分ける必要があります。
現場と役員で、評価が分かれる
最後に、社内の受け止め方について書きます。
現場と経営層で、技能実習生への評価が分かれることがあります。
現場は、日々の負荷を見ています。 言葉が通じない、手順を何度も説明する、生活の面倒を見る。手がかかることを、直接体感しています。
経営層は、結果を見ています。 人員が確保できている、現場が回っている。その裏側でどれだけ手がかかっているかは、数字に出てきません。
この非対称は、放置すると問題になる
現場からすれば、「上は簡単に言うが、実際にやるのはこちらだ」という感覚になります。
当社では、技能検定の対策で業務時間を使う際、事前に社内へ周知しました。 説明がないまま実習生だけが作業を止めていれば、不公平感が生まれます。
説明のコストは、説明しなかった場合の摩擦より、はるかに小さい。
そしてもう一点。手がかかることを、経営層が認識しているかどうかが重要です。総務の工数、現場の指導時間。これらが「見えないコスト」のままだと、担当者が疲弊します。
検討している会社へ
1. 「安い労働力」ではない。 給与は日本人と同等以上、そこに監理費と初期費用が上乗せされます。
- 金額に出ないコストを見積もる。 総務の工数、指導の時間、生活支援。当社では毎月0.2人月程度です。
- 単年ではなく8年で考える。 技能実習3年で終わる話ではありません。特定技能まで含めて計画してください。
- 継続受入れを前提にする。 住居の用意も、教える体制も、1人目に負担が集中します。一度きりなら割に合いません。
- 現場と経営層の認識を揃える。 手がかかることを経営層が把握していないと、担当者が疲弊します。
- 2年目以降の緩みに注意する。 先輩がいる利点の裏で、日本語習得が止まることがあります。
よくある質問
技能実習生は安く雇えますか
雇えません。技能実習生にも特定技能外国人にも、日本人と同等額以上の報酬を支払う義務があります。そのうえで監理費や初期費用が上乗せされるため、コストだけで見れば日本人を雇うほうが安く済みます。
初期費用はいくらかかりますか
1人あたり50万〜90万円程度という試算が一般的です。在留資格の申請、渡航費、入国前講習費、健康診断、保険などが含まれます。加えて住居と家財の準備が必要です。
毎月いくらかかりますか
監理費が1名あたり月3万〜5万円、送出機関への機関費が月5千円〜1万円が相場です。特定技能に移行すると登録支援機関への委託費が月2万〜4万円となり、送出機関への継続費用がなくなります。
金額以外にかかるコストはありますか
総務の工数です。当社では毎月0.2人月程度を見込んでいます。定期報告、監査対応、書類作成、生活面の相談、病院への付き添い、通勤の案内。報告義務があるため継続的に発生します。
それでも受け入れる意味はありますか
職人の中途市場は価格が上がり続けており、新卒は定着が読めません。技能実習3年と特定技能5年を合わせた8年という期間が読めること自体に価値がある、というのが当社の判断です。
社内の理解は得られますか
現場と経営層で評価が分かれることがあります。現場は日々の負荷を体感し、経営層は人員確保という結果を見ます。手がかかることを経営層が把握していないと、担当者が疲弊します。
この話の、実例を持ち寄る場があります。
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