技能実習生の技能検定|企業がやる実技対策と費用
技能実習2号へ、そして特定技能へ移行するには、技能検定に合格する必要があります。 制度の解説記事は多くありますが、受け入れた会社が実際に何をやったのかを書いたものが見当たりませんでした。
目次全11章
技能実習2号へ、そして特定技能へ移行するには、技能検定に合格する必要があります。
制度の解説記事は多くありますが、受け入れた会社が実際に何をやったのかを書いたものが見当たりませんでした。 誰が対策を見るのか、業務時間内にやるのか、費用は誰が持つのか。ここが実務の核心なのに、ほとんど書かれていません。
当社は建築・内装業で、内装仕上げ施工(表装作業)の職種で受け入れています。結果として全員が合格しましたが、それは対策を会社の業務時間内にやったからだと考えています。
書き手は、従業員約50人の建築・内装会社で総務部長とIT部長を兼任しています。実習生の受入れ実務も担当しています。
何を求められるのか
技能実習では、段階ごとに試験があります。

| 段階 | 試験 | 内容 |
|---|---|---|
| 1年目の終わり | 基礎級 | 学科(筆記)+実技 |
| 3年目の終わり | 随時3級 | 学科(筆記)+実技 |
合格しないと次の段階に進めません。 技能実習1号から2号へ、2号から3号へ。そして特定技能への移行にも関わります。
つまり、試験は本人だけの問題ではなく、会社の人員計画の問題です。 落ちれば予定していた期間の就労ができなくなります。
当社の職種の場合
内装仕上げ施工の表装作業では、実技として壁紙の施工が課されます。寸法を測り、糊付けし、貼り、仕上げる。 制限時間内に、決められた精度で仕上げる必要があります。
これは知識ではなく手が覚えているかどうかの試験です。だから練習が要ります。
学科は日本語で出題されます。専門用語が日本語で読めるかどうかが、そのまま点数になります。
誰が対策を見るのか
ここが最も現実的な問題でした。
建前と実態
本来は、社内の職人が見るべきです。 技能実習は技能移転の制度であり、現場の技術を教えるのが趣旨です。制度上もそうなっています。
しかし、職人は忙しい。
現場が動いている以上、手を止めれば工程に響きます。「試験対策のために半日空けてくれ」と言えば、その分だけ現場が遅れる。そして誰も、それを明示的に断るわけではありません。ただ、時間が取れないだけです。
結果として、総務が吸収することになります。
これは技能実習に限った話ではない
当社に限った事情ではないと思います。現場が忙しいので、本来現場がやるべきことが管理部門に流れてくる。 そして誰も明示的に決めていない。
中小企業では、よくある構造だと思います。問題は、それが「誰の仕事か」を決めないまま常態化することです。
当社は結果的に総務で引き受けましたが、これは最適な体制ではありません。 技術を教えるのは本来、技術を持っている人の仕事です。
同じことをする会社は、最初に「誰が見るのか」を決めておいたほうがいいと思います。決めないと、なんとなく手が空いている人のところに来ます。
業務時間内にやった
実技対策は、業務時間内に、会社で行いました。
頻度
2〜3回程度。 試験前に集中して行いました。毎日やる必要はありませんが、直前に1回だけでは足りません。
手が覚えるまでの回数が必要で、それが2〜3回という水準でした。
材料費と、試験官の手配
表装の練習には、壁紙も糊も消費します。これらの材料費は会社で負担しました。
もうひとつ、想定していなかったのが試験官の手配です。実技を採点する技能検定委員は、受検者が所属する企業以外の人でなければなりません。当社では、普段から付き合いのある職人さんに依頼しました。
この手配には手間がかかります。誰に頼むか、日程をどう合わせるか。声をかけられる職人が社外にいるかどうかで、難易度がかなり変わります。
なぜ業務時間内にしたか
休日や終業後にやるという選択肢もありました。それをしなかった理由は2つです。
1つは、労働時間の扱いが曖昧になるからです。 会社の指示で対策を行う以上、それは労働時間です。休日にやらせて無給にすれば、労務上の問題になります。中途半端にするなら、最初から業務として扱うべきだと判断しました。
もう1つは、会社の都合でもあるからです。 合格しなければ、予定していた期間の就労ができません。これは本人だけの問題ではなく、当社の人員計画の問題です。 会社が困ることに、会社が時間を出すのは筋が通ります。
社内の反発はなかった。ただし周知は必要だった
業務時間を使い、材料費も会社が持つ。これに対する社内の反発はありませんでした。
ただし、事前の周知は必要でした。
何も言わずに実習生だけが作業を止めて練習していると、周りには「なぜあの人は仕事をしていないのか」と見えます。それが積み重なると、不公平感になります。
事前に「この期間、試験対策のために時間を使う」と伝えておけば、この問題は起きません。説明のコストは、周知しなかった場合の摩擦より、はるかに小さい。
反発がなかったのは、周知したからだと考えています。
当日、誰が来るのか
これは事前に知っておくべきでした。
監理団体は必ず同席します。 当日の進行、段取り、試験後のデータ提出まで担ってくれます。ここは任せられる部分です。
これとは別に、都道府県の職業能力開発協会(大阪府の場合は大阪府職業能力開発協会)の職員が立ち会うことがあります。 当社の1年目には立ち会いがありました。毎回必ず来るとは限りませんが、来る前提で準備しておくのが安全です。
立ち会いの有無で、やることを変えない
念のため書いておくと、協会の立ち会いがあるかどうかで、試験の内容や進め方を変えることはできません。見られていないから省略する、という発想は取れません。実技試験は国家検定で、採点するのは社外の技能検定委員です。
何を見られているのか
見られているのは、実習生の技能だけではありません。
会社がきちんと技能移転をしているかどうかが問われています。技能実習は制度上、技術を教える仕組みです。実習生が明らかに練習していない状態で試験に臨めば、それは会社が実習をさせていない証拠になります。
つまり、準備不足がそのまま企業の評価になります。
実習生の合否だけの問題ではない
ここが重要な点です。
不合格になった場合、困るのは実習生本人と、就労期間が予定通りにいかない会社です。それだけでも十分な問題ですが、外部の目が入る以上、「この会社は適切に実習させていない」という印象が残ります。
監理団体との関係、次の受入れ、監査での扱い。目に見える形ではなくても、影響します。
1年目こそ、入念に準備する
負担は1人目に集中すると先に書きましたが、外部の目が入るという意味でも1年目が最も重いことになります。
2年目以降は先輩実習生が教えられるようになり、会社としても手順が分かっています。しかし1年目は、教える側も初めてで、そこに外部の目が入る。
「とりあえず受けさせてみる」という進め方は、1年目については取れません。 2〜3回の対策を、確実に確保してください。
筆記は監理団体に頼った
実技は会社で見ましたが、学科(筆記)は監理団体にフォローしてもらいました。
日本語の勉強会を開いてもらい、そこで対策を進めています。
役割分担の考え方
この分担には理由があります。
実技は、その職種を知っている人でないと教えられません。 表装の施工を、監理団体の職員が教えることはできない。現場を持っている会社にしかできない部分です。
一方、日本語と学科は、監理団体のほうが慣れています。 複数の企業を担当しており、教材も蓄積がある。同じことを自社でやるのは非効率です。
つまり、自社にしかできないことを自社でやり、そうでないものは委託するという整理です。
監理団体に何を期待できるかは、契約次第
ただし注意点があります。どこまでフォローしてくれるかは、監理団体によって違います。
日本語の勉強会を開いてくれるところもあれば、書類の手続きだけというところもある。契約前に、試験対策をどこまで見てもらえるかを確認しておくべきです。
当社が監理団体を選んだ経緯については、別記事で扱っています。
1人目が最も重い
これから受け入れる会社に、最も伝えたいことです。

負担は1人目に集中します。2年目以降は、はっきりと楽になります。
理由は単純で、先輩の技能実習生が教えられるようになるからです。
先輩が教える構造
2年目の実習生は、前年に同じ試験を受けています。何が出るか、どこでつまずくかを知っています。 そして同じ言語を話す。
会社の人間が日本語で説明するより、先輩が母国語で説明したほうが、はるかに速く伝わります。
結果として、2人目以降は総務の負担が大きく下がります。
計画の立て方が変わる
この非対称は、受入計画に影響します。
「1人だけ受け入れて様子を見る」という進め方は、実は効率が悪い。 1人目の負担を払った後、その経験が次に活きないからです。
継続して受け入れる前提なら、初年度の負担は初期投資として見るべきです。 2年目以降に回収されます。
逆に、1人限りで終わらせるつもりなら、負担は割に合わないかもしれません。 そこは事前に判断しておいたほうがいいと思います。
全員合格した。ただし
当社は、これまでのところ全員が合格しています。
これを「うちは大丈夫でした」と書くつもりはありません。 合格したのは、対策に時間と費用を使ったからだと考えています。
逆に言えば、対策をせずに受けさせれば、落ちる可能性は十分にあります。 実技は手が覚えているかどうかの試験であり、学科は日本語で読めるかどうかの試験です。どちらも、何もしなければ通りません。
もし不合格だったら
当社では起きていませんが、制度上どうなるかは整理しておくべきです。
再受験の機会はあります。 ただし次の在留資格への移行時期に影響するため、スケジュールに余裕を持っておく必要があります。
そして再受験には、改めて対策の時間と費用がかかります。 1回で通すほうが、結果的に安く済みます。
「落ちたときのこと」を検索している人が一定数いるのを見ると、多くの会社が不安を抱えているのだと思います。当社の実感としては、対策に時間を使えば通ります。 使わなければ分かりません。
いくら見ておくべきか
費用の内訳を整理します。金額は職種と地域で変わるため、項目だけ挙げます。

| 項目 | 負担 |
|---|---|
| 試験官(技能検定委員)の手配 | 会社(社外の職人に依頼) |
| 練習用の材料費 | 会社 |
| 実技対策の時間(業務時間内) | 会社(人件費として) |
| 学科・日本語のフォロー | 監理団体(監理費に含まれるか要確認) |
見落とされやすいのが3行目です。 実技対策を業務時間内にやるということは、その時間の人件費が発生しています。教える側の職人の時間も含めれば、決して小さくありません。
予算を組む段階では、材料費と人件費に加えて、誰に試験官を頼むかも先に決めておく必要があります。
これから受け入れる会社へ
要点をまとめます。
1. 試験当日は、監理団体が同席する。 さらに職業能力開発協会の職員が立ち会うこともあります。見られているのは実習生の技能だけでなく、会社が技能移転をしているかどうかです。
- 誰が実技を見るのか、最初に決める。 決めないと、手が空いている部門に流れます。本来は現場の仕事ですが、現場は忙しい。この前提で体制を組んでください。
- 対策は業務時間内でやる。 会社の指示で行う以上、労働時間です。中途半端にすると労務上の問題になります。
- 事前に社内へ周知する。 反発の原因は制度ではなく、説明がないことです。
- 実技は自社、学科は監理団体。 自社にしかできないことを自社でやる。この分担が現実的でした。
- 1人目の負担は初期投資として見る。 2年目以降は先輩が教えられるようになり、負担が下がります。
- 材料費と人件費、そして試験官の手配を見込む。 実技を採点するのは社外の技能検定委員です。
よくある質問
技能検定に落ちたらどうなりますか
再受験の機会はあります。ただし次の在留資格への移行時期に影響するため、スケジュールに余裕を持つ必要があります。育成就労制度では、特定技能1号への移行に必要な試験に不合格となった場合、再受験に必要な範囲で最大1年の在留継続が認められる見込みです。
試験対策は業務時間内にやるべきですか
会社の指示で行う以上、それは労働時間です。休日に無給でやらせれば労務上の問題になります。中途半端にするより、最初から業務として扱うことをおすすめします。
実技対策は何回くらい必要ですか
当社では試験前に2〜3回でした。手が覚えるまでの回数が必要で、直前に1回だけでは足りません。職種によって変わります。
誰が実技を教えるべきですか
制度上は現場の職人が教えるのが本来の形です。ただし現場が忙しく、実際には総務が引き受けることになりがちです。最初に「誰が見るのか」を決めておかないと、手が空いている部門に流れます。
費用は誰が負担しますか
練習用の材料費は会社が負担しています。加えて、業務時間内に対策を行う分の人件費も発生します。もうひとつ見落としやすいのが、実技を採点する技能検定委員の手配です。受検者が所属する企業以外の人に依頼する必要があります。
試験の当日は誰が来ますか
監理団体は必ず同席し、進行や段取り、試験後のデータ提出を担ってくれます。これとは別に、都道府県の職業能力開発協会の職員が立ち会うことがあります。当社の1年目には立ち会いがありました。なお、立ち会いの有無で試験の内容や進め方を変えることはできません。
この話の、実例を持ち寄る場があります。
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