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社内DX 2026.08.18公開 · 11分で読める

GmailのPOP3廃止|3つの選択肢と移行の判断基準

ログイン画面で、ワンタイムパスワードの入力を待っていました。届いたのは10分後で、そのコードはすでに使えませんでした。 取引先から「先週送ったメールの件ですが」と言われたこともあります。手元には届いていない。

GmailのPOP3廃止|3つの選択肢と移行の判断基準

目次全9章
  1. 何が終わるのか
  2. 自分が該当するかを3分で確認する
  3. 放置すると何が起きるか
  4. 対処法は3つある
  5. 当社が1と2を外した理由
  6. 当社の場合、別の理由が先にあった
  7. 移行の実際
  8. 期限は延びた。それでも先にやってよかったか
  9. よくある質問

ログイン画面で、ワンタイムパスワードの入力を待っていました。届いたのは10分後で、そのコードはすでに使えませんでした。

取引先から「先週送ったメールの件ですが」と言われたこともあります。手元には届いていない。探すと、10分以上遅れて受信していました。

原因は、レンタルサーバーのメールをGmailに取り込む構成でした。そしてその仕組み自体が、終了します。

Gmailの「他のアカウントのメールを確認(POP3)」機能が廃止されるためです。同じ構成の会社は、対応が必要になります。

最初に、多くの方が気にする点を書いておきます。メールアドレスは変わりません。 どの選択肢を取っても、自社ドメインのアドレスはそのまま使えます。ここが不安で止まっている場合、その心配は不要です。

この記事では対処法を3つ挙げ、それぞれの向き不向きを書きます。当社は最終的にGoogle Workspaceに移行しましたが、すべての会社にそれを勧めるつもりはありません。転送設定で済むなら、そのほうが早くて安く済みます。

書き手は、従業員約50人の建築・内装会社で総務部長とIT部長を兼任しています。前職はシステムエンジニアを約15年。移行当時は35アカウントでした。

何が終わるのか

終了するのは、Gmailの設定画面「アカウントとインポート」にある 「他のアカウントのメールを確認」 です。

レンタルサーバーやプロバイダのメールをGmail側が定期的に取りに行き、Gmailの受信トレイに表示する機能です。独自ドメインのメールをGmailで読むための手軽な方法として、広く使われてきました。

理由はセキュリティ

この仕組みでは、外部メールアカウントのIDとパスワードを、Gmailの設定画面に保存しておく必要があります。いわゆるBasic認証です。

POP3は1988年に策定された古いプロトコルで、この認証方式が現在のセキュリティ要件に合わなくなったことが背景にあります。

スケジュールは途中で変わっています

ここは注意が必要です。当初は2026年1月に終了と報じられましたが、その後変更されています。

現在の案内では、2026年第1四半期までに新規ユーザーのサポートを終了し、既存ユーザーは2026年後半の完全廃止まで利用できるとされています。

つまり、新しく設定を追加することは段階的にできなくなり、すでに使っている分も年内には止まります。期限は延びましたが、なくなってはいません。

自分が該当するかを3分で確認する

すべてのGmail利用者が対象ではありません。次の手順で確認してください。

  1. パソコンでGmailを開く
  2. 右上の歯車から「すべての設定を表示」
  3. 「アカウントとインポート」タブを開く
  4. 「他のアカウントのメールを確認」の欄を見る

ここに自社ドメインのメールアドレスが表示されていれば、対象です。

対象にならないケース

次の使い方は、今回の廃止とは無関係です。

  • スマートフォンのGmailアプリに別のメールアカウントを追加している(IMAP接続のため)
  • Google Workspaceで独自ドメインを運用している
  • Gmailのアドレスをそのまま使っている

「Gmailを使っているから危ない」わけではありません。外部サーバーのメールをGmailに取り込んでいる場合だけが対象です。

放置すると何が起きるか

ここが最も重要な部分です。誤解されやすいので、正確に書きます。

放置すると何が起きるかの図解

メールは消えません。届かなくなるのでもありません。

起きるのは、レンタルサーバー側にメールが届き続け、誰も見ていない状態になることです。Gmailが取りに行かなくなるだけで、送信者から見れば正常に送信できています。エラーも返りません。

つまり、相手は送ったつもり、こちらは届いていない。この状態が、気づかないまま続きます。

そして、いずれ容量が尽きます

見ていないメールは溜まり続けます。レンタルサーバーのメールボックスには容量の上限があるため、いずれ満杯になります。

そこから先は受信を拒否し始めます。このとき初めて送信者にエラーが返りますが、それまでの期間に届いたメールは、誰にも読まれないままサーバーに残っています。

「ある日突然メールが来なくなる」のではなく、「届いていないことに気づけない期間が続く」。これがこの問題の本当の怖さです。

過去のメールは失われません

安心材料も書いておきます。

POP3取得は、サーバーからメールを引き取る方式です。実体はGmail側にあります。当社もPOP3で運用していたため、さくらのサーバー側に過去メールは残っていませんでした。

したがって、廃止によって過去のメールが消えることはありません。困るのは今後届く分だけです。

ただし裏を返すと、サーバー側にバックアップが存在しない状態で運用していたということでもあります。この構成の会社は、その事実を認識しておいたほうがよいと思います。

対処法は3つある

選択肢は次の3つです。上から順に、手間とコストが増えていきます。

POP3終了への対処法は3つの図解
選択肢 手間 費用 向いている会社
1. 転送設定に切り替える なし サーバー容量に余裕がある
2. メールソフトでIMAP受信 なし 各自が設定できる
3. Google Workspaceに移行 月額 他にも課題を抱えている

1. 転送設定に切り替える

レンタルサーバー側で、届いたメールをGmailに自動転送する設定に変えます。最も手軽で、費用もかかりません。

多くの会社にとって、これが第一候補になるはずです。

ただし確認すべき点が2つあります。

サーバー容量を消費し続けます。 転送設定では、元のサーバーにもメールが残る構成になるのが一般的です。POP3で運用してきた会社は、サーバーを容量の器として使ってきていません。切り替えた途端に容量が足りなくなる可能性があります。

送信の扱いは別問題です。 受信は転送で解決しますが、Gmailから自社ドメインで送信する設定は別に必要です。

2. メールソフトでIMAP受信に変える

OutlookやThunderbirdなどのメールソフトを使い、IMAPでサーバーに直接接続します。

こちらもサーバー側にメールを置き続ける方式なので、容量の問題は転送設定と同じく発生します。

加えて、全員分の設定作業が必要になります。35人分、50人分となると、これは小さくない負担です。

3. Google Workspaceに移行する

独自ドメインのメールを、Google側で直接受け取る構成にします。レンタルサーバーのメール機能を使わなくなります。

費用がかかり、作業量も最も多い選択肢です。 メールの問題だけを解決したいなら、ここまでやる必要はありません。

当社が1と2を外した理由

結論から言うと、どちらもサーバー容量が理由でした。

前述の通り、転送もIMAPも、レンタルサーバー側にメールを保持し続ける方式です。当社はPOP3で運用してきたため、サーバーの容量はメールを溜める前提になっていませんでした。切り替えれば、遠からず上限に当たることが見えていました。

IMAPについては、それに加えてメールソフトの問題がありました。

全員がGmailの画面に慣れています。そこからOutlookやThunderbirdに移すのは、機能的には可能でも、運用として無理があると判断しました。 35人に設定させ、使い方を教え、質問に答える。この負荷を考えると、選択肢になりませんでした。

判断のポイントは「自社サーバーの容量」

同じ構成の会社が判断するなら、まずレンタルサーバーのメールボックス容量を確認してください。

日々の受信量と照らして、何ヶ月分溜められるか。ここに余裕があるなら、転送設定が最も合理的です。余裕がないなら、当社と同じ検討が必要になります。

当社の場合、別の理由が先にあった

ここは補足しておきます。当社がWorkspaceを選んだ最大の理由は、メールではありませんでした。

同じ時期に、社内ファイルサーバーのリース更改を迎えていました。UTMだけで100万円前後という見積もりが出ており、ローカルにサーバーを置き続けるかどうかを検討していたところでした。

つまり、もともとクラウドへの移行を考えていたところに、POP3廃止という期限が来た。 メール移行はその一部として実行されています。

メールの問題だけを抱えている会社が、同じ判断をする必要はありません。外部から来た期限は、社内の決裁を通す材料としては非常に強く働きます。 ただしそれは、動く理由が別に用意できている場合の話です。

移行の実際

Workspaceに移す場合の実績値を書いておきます。当時35アカウントでの数字です。

当社の移行の実績値の図解
作業 実績
全体の工数 約1人月(定着まで含む)
メール移行の待ち時間 1人あたり2時間〜半日
期間 移行作業自体は数週間

メール移行は個人に任せませんでした

手順書を配って各自でやってもらう方法は取らず、全員分をこちらで引き受けました。

35人規模の会社で、設定作業を確実にこなせる人は多くありません。中途半端に終わった状態を後から回収するほうが、はるかに手間がかかります。

移行処理そのものは待ち時間が発生するので、順番に流していく形になります。

使っていないアドレスを棚卸ししました

移行にあたって、使われていないメールアドレスを整理しました。

Google Workspaceはアカウント単位の課金です。退職者のアドレス、使われなくなった部署のアドレス、テスト用に作ったまま放置されていたもの。これらを整理した分が、そのまま月額に効きます。

移行は、こうした棚卸しができる数少ない機会です。

DNSとメール認証について

SPFやDKIMといったメール認証の設定変更が必要になります。ここは前提を明かしておきます。

当社は以前からGmailで独自ドメインを送受信していたため、この種の設定は過去に経験がありました。 手順の記録も残っていたので、詰まりませんでした。

逆に言えば、経験がない会社はここで止まる可能性があります。 上に書いた「約1人月」という数字は、DNSとメール認証の知識がある前提の工数です。そうでない場合は、代理店やベンダーに依頼する前提で見積もってください。

設定を誤ると、自社から送ったメールが相手先で迷惑メール判定されます。 気づきにくく、影響が大きい箇所です。

期限は延びた。それでも先にやってよかったか

冒頭で書いた通り、当初2026年1月とされていた期限は、その後2026年後半に変更されました。

結果だけ見れば、当社は焦って動いたことになります。 待っていれば、もっと余裕を持って検討できました。

それでも、先にやってよかったと考えています。理由は2つあります。

1つは、判断が早まったこと。 メールが10分以上遅れる状態は、移行前から続いていました。ワンタイムパスワードが有効期限内に届かず、認証が通らない。取引先から「送った」と言われても手元にない。全員がその不便に慣れてしまい、誰も問題だと言わなくなっていました。

外部から期限が来なければ、この状態はさらに何年か続いていたはずです。

もう1つは、延期を待った会社が、いま同じ問題を抱えたままだということ。 期限が動いても、対応が必要な事実は変わりません。先送りした分だけ、検討の時間が減っています。

中小企業のDXが進まない最大の理由は、技術でも予算でもなく、変える理由を社内で作れないことだと思います。 外部から来る期限は、その理由を代わりに用意してくれます。

いまこの記事を読んでいる方にとって、この期限はまだ使えます。稟議を通す材料として、これ以上分かりやすいものはありません。

よくある質問

自分が対象かどうか、どこで確認できますか

パソコンでGmailを開き、設定の「アカウントとインポート」タブを見てください。「他のアカウントのメールを確認」の欄に自社ドメインのアドレスが表示されていれば対象です。スマートフォンのGmailアプリに別アカウントを追加している場合はIMAP接続のため、対象外です。

期限を過ぎると、メールは消えますか

消えません。レンタルサーバー側に届き続け、Gmailが取りに行かなくなるだけです。送信者にはエラーも返らないため、届いていないことに気づけない期間が続きます。放置するとサーバーの容量が尽き、そこで初めて受信を拒否し始めます。

過去に受信したメールは失われますか

失われません。POP3取得はサーバーからメールを引き取る方式のため、実体はGmail側にあります。ただし裏を返すと、サーバー側にバックアップが存在しない状態で運用していたということでもあります。

転送設定に変えるだけでは駄目ですか

多くの会社では、それで足ります。ただし2点確認してください。転送設定では元のサーバーにもメールが残る構成になるのが一般的で、容量を消費し続けます。またGmailから自社ドメインで送信する設定は別に必要です。

メールアドレスは変わりますか

変わりません。転送、IMAP、Google Workspace移行のいずれを選んでも、自社ドメインのアドレスはそのまま使えます。

Google Workspaceに移行する場合、どのくらいの期間が必要ですか

当社は35アカウントで、移行作業自体は数週間でした。メール移行の処理には1人あたり2時間から半日程度の待ち時間が発生するため、順番に流していく形になります。ただしDNSやメール認証の設定経験がない場合は、委託を前提に見込んでください。

移行作業は各自にやってもらってもよいですか

おすすめしません。当社は全員分をこちらで引き受けました。設定作業を確実にこなせる人は多くなく、中途半端に終わった状態を後から回収するほうが手間がかかります。

この話の、実例を持ち寄る場があります

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